3月16日(土)、映画を愛する方々から熱い支持を得ている「アップリンク渋谷」で「半世界」の舞台挨拶が行われました。
これまでの舞台挨拶とは違い初めて照明技師の宗賢次郎さんをお招きし、阪本順治監督の進行の元で舞台挨拶が行われ、二人でなければ語れないトークで観客の皆さんを楽しませました。
監督の楽しいトークに時に笑いが起きながらも、作品へのこだわりに関する話しの数々を耳にして終始感嘆する声が会場に響きわたりました。

宗さんは阪本監督作品には照明助手として「KT」「座頭市THE LAST」、「北のカナリアたち」に参加、その後「エルネスト」に続き今回の「半世界」で照明技師を務めました。
阪本監督は「(稲垣)吾郎からは無理に笑いをとらなくていいと言われているので」と言いながらも「大阪出身なものでやはり笑いをとってしまいました」とサービス精神にあふれるトークを展開。
30分程の時間もあっという間に過ぎ、最後には急きょ、観客の皆さんからの質問にもお答えすることになりました。

トークイベント冒頭、上映劇場の「アップリンク渋谷」はホワイトスクリーンでの上映となり、「(撮影の時には)白を基調に発色を調整しているのでここでは僕らが見せたいものが見られます」と監督が説明し、監督ならではの視点で、シネコンで味わえるだいご味とは一味違い、アップリンクで観るからこその良さがあることをご紹介しました。

続いて宗さんから照明の観点からこの映画の魅力について語っていただくことに。
「海も山も炭焼き小屋を中心に映画のトーンを考えていました。炭焼きの火の色からすべてを考えました。ゴールドというフィルターを使い、金色をオレンジの炎の色に混ぜて見せています」とのこと。
家のシーンやスナックで飲んでいるシーンでも、蛍光灯とは別に敢えてタングステンを使用しオレンジ色が様々なシーンで使われているそう。
「幻想的なシーンでも炭焼きの炎に包まれていくというイメージで炭焼きの炎の色をつかってみました」と炎の色が効果的に使われていることを宗さんは紹介してくれました。
観客の皆さんも感心しきり、熱心にトークに聞き入っていました。

さらに紘(稲垣吾郎)、瑛介(長谷川博己)、光彦(渋川清彦)の3人の中学の同級生たちが海辺でおしくらまんじゅうをするシーンでは「実際、光源がなく、つくりものの街灯を用意したり、27メートルの工事用のクレーンに照明を乗せて撮影しました」といった工夫についても語られました。

ウバメガシという伊勢志摩備長炭の原料となる木が生息する急な斜面での撮影ではカメラ機材をあげることが一番大変だったというエピソードが監督から改めて語られると「阪本監督の現場はそうなのですがみんなで協力してカメラ機材を持ち上げました」といった担当を超えて皆で助け合う阪本組ならではのチームワークについても宗さんから語られました。

監督のオリジナル脚本であり監督の実体験が多く描きこまれている本作品。
瑛介が部屋を整理している際、自分が中学時代に柔道で勝利をおさめた際にもらった赤いリボンを母親が大事に保管していたことを発見し涙するシーンに触れ、監督自身が「毎日映画コンクール」で受賞した時の赤いリボンを母親がとっておいてくれた実体験をもとにしているということを明かしていました。

舞台挨拶最後には監督の提案により観客の皆さまから質問を受けることに。
池脇さんが体調不良となり台本が書き換えられたというのはどの辺りのシーンなのかという質問が寄せられました。

あるシーンで大量の雨に降られるシーンを撮影し無理をさせてしまったこともあり池脇さんが体調を崩され台本が書き換えられたことを監督が説明。
そのシーンとは夫婦が部屋で休もうとしているシーンであることを明かしました。
稲垣演じる紘が妻の初乃(池脇千鶴)の体を乗り越えて仏壇の灯を消そうとするなど夫婦のごく自然なやりとりながら印象に残るシーンとなっています。

実は台本上ではいくつかに渡っていたシーンを1つのシーンに融合させたそうで「それによって夫婦のとてもいいシーンが生まれました」という撮影秘話が今回初めて明らかになりました。
雨のシーンでも曇天であってほしいにも関わらず撮影当日が晴れの天気予報となってしまい、悩んだ結果、監督は「きつねの嫁入り」というセリフを入れようと決断、「きつねの嫁入り」がはいった俳句をスタッフみんなで探したそう。
「追い詰められた時に挽回していくのがものづくりのだいご味」と監督だからこその言葉に観客の皆さんも深くうなづいていました。

「撮影していると最後までもっといいものがあるんじゃないか、もっといいエンディングがあるんじゃないか、と考えている」と監督は語ります。
監督や宗さんが作品が完成する最後の最後までこだわりぬいた「半世界」をぜひご覧いただければと思います。